先史時代
190万年前ほどからヒトが現在の東南アジアに住み始めた。ヴェトナム北部にあたる地域からも、原人の洞穴や歯が出土している。
紀元前3万5000年~紀元前3万年ごろには、剥片石器を主とする石器を使う文化が現在のヴェトナムにあたる地域に存在したことも明らかになっており、これはソンヴィー文化と呼ばれる。
地球の温暖化が始まった紀元前1万年頃、東南アジアは低緯度のため大きな環境変化はなかった。人々は狩猟生活をしており、打製石器が使われていた。この頃使われていた打製石器や洞穴が現在のヴェトナム北部、ホアビン省とその周辺で多数見つかっている。これらの文化はホアビニアン(ホアビン文化)と呼ばれる。
数千年にわたるホアビニアンのあとに現れた生活様式は、バクソニアン(バクソン文化)と呼ばれる。これは基本的にホアビニアンの伝統を引いた石器文化だが、打製石器に加えて、刃の部分だけを研磨した石斧も見つかっている。
紀元前4000年頃、ヴェトナム北部の海岸地方で土器がつくられるようになった。これはダブート文化と呼ばれる。
紀元前2000年頃から東南アジア大陸で水稲農耕社会が開始される。ヴェトナムではこうした人々の生活は、ホン河流域のフングエン文化、ハイフォンとハロン湾域のハロン文化、タインホア省マー川下流域のホアロク文化と呼ばれる。
フングエン文化以降、青銅器の数も増えていく。北部の金属器文化は紀元前400年頃、ドンソン文化へ発展していく。ドンソン文化は中国の雲南や東北タイの文化を取り入れていた。
ドンソン文化と同じ頃、中部沿岸地方には別の文化があり、これはサーフィン文化と呼ばれる。墓地が見つかっており、土器の棺やナイフ、鎌などの鉄器、青銅器やガラス製、貝や石などの装飾品が見つかっている。
参考文献
石井米雄・桜井由躬雄編『東南アジア史Ⅰ』山川出版社、1999
桐山昇他編『東南アジアの歴史』有斐閣、2003